memorandums

日々の生活で問題解決したこと、知ってよかったことなどを自分が思い出すために記録しています。

ACM Tech Talks

昨日、ACM会員向けのTech Talkがありました。要はウェビナーです。Zoomでの開催なので質疑応答もできるというのがウリのようです。

自分でもなぜかわかりませんがこのセミナーは毎回みてます。もったいない精神なのでしょう。あとなかなかこういうセミナーは地方では見れないので刺激になってよいというのもあるのでしょう。日本時間の深夜2時くらいに開始されるので、翌日、録画を通勤電車で観ることが多いです。

昨日の講演は以下でした。

on.acm.org

タイトルのとおりソフトウェア開発の方法論に関する話でした。ご自身(たぶん有名な方なんでしょう)は大学教授であり、ドイツのソフトウェアセンター?という研究所のリーダーでもあるようです。どっちが本業かわかりません。

Software Center

この研究所?のHPを見ると名だたる世界企業と契約していて論文を多数生み出されているようです。論文が企業向けのセミナーの元ネタになっているようでもあります。アカデミックな論文を軸として、新しい方法論をセミナーして、しかも企業の方が集まるっていうのが本当に素晴らしいと思います。

HPを見た程度なので実際にはどうなのかはわかりませんが、定期的に開催されているセミナーの内容を見ると、現実のプロジェクトに取り組んでいる最中のエンジニアに指針を与えている、あるいは、一緒に議論して答えを見つけ出そうとしているように見えます。

例えば、一例がHPのトップにも書かれていた活動記録のページです。企業の方が企業の方向けにこういうワークショップを開催する例はよくあると思いますが、大学教員がこういう話題で現実問題に対して答えやサジェストできる人ってどれくらいいるんだろう。。。と思います。いや素晴らしいです。

Time to let go of agile – what is next? – Software Center

僕も転職したての頃はそういうことを研究したかったです。実務をやりながら研究なんてまず無理ですから、実務の傍らにいてそこで新しい情報を収集しながら何か方法を提案したりパイロットプロジェクトで試したり、ということができたら、と思っていました。

ただ、現実はそう甘くありませんでした。日本企業の多くは受託開発です。前職もそう。案件を分析するとなるとそれはその企業が顧客と秘密保持契約を結びます。それを横から観察してデータを公開するなんてなかなかできません(もちろん、やっている方はいます、が大変です)

何より、論文になることと、実務に貢献することはちょっとベクトルがズレています。これを合わせるのは難しいです。新しい提案をしたところでそれを試す場を現実社会の中で持つというこが相当な困難を伴います。不可能ではありませんが。

できるだけ生産性のよいテーマを選択すべきでしょうし、社会的なニーズがあったとしても、それに関わるだけでも体力と時間とお金を必要とするテーマになりますから、なかなか選ぼうという気が起きないというのが正直なところじゃないかな、というのが僕ほほんと個人的な体験で思うことです。なのでソフトウェア工学の研究はいまはもうやらないことにしました。転職して10年くらいは自分でも頑張ったつもりです。研究会や学会もあちこち出席したり発表も少しだけですがしたりもしましたが成果らしい成果は出せませんでした。実力不足です。学会からも抜けました。とはいえ、ソフトウェア開発は自分の興味の中心であり続けていますので、今後、この方をウォッチしていきたいと思います。

かなり脱線しました。すいません。

あ、そうそう講演の内容ですが、実はこのACM Tech Talksで話す方って以前に多数講演されている方が多くて、だいたいタイトルでググると以前の講演動画がYouTubeとかで見つかります。今回の講演は以下でも見れるみたいですね。興味ある方はどうぞご覧ください。

www.youtube.com

飛ばしながら観たんですが、言いたいことは 要件定義のやり方を変えないとアジャイルとかで要求の変化に追従したところで、そもそもの要求がちゃんと取れてない(根拠は「開発したけど使われていない機能が多数ある」というよく聞くあれです)とダメじゃん、ということで、その対処方法を提案している ものだと解釈しました。間違っていたらごめんなさい。対処方法の1つとしてHYPEXモデルっていうのを提唱しているようです。論文を読もうとしたのですが大学契約でも読めない対象の書籍で読めていません。。。残念ですが。いつか読みたいと思います。ちなみに論文は以下です。

The HYPEX Model: From Opinions to Data-Driven Software Development | SpringerLink

講演スライドの説明から察するに、 顧客がプロダクトに対して優先する項目の順位を見定めて、その順位に沿う仮説を立てて実験し顧客とともに検証していく という感じなのかなと思いました。顧客が要求することより、その根源となるその顧客が意識している要素をまずきちんと押さえることが重要だよ、と主張されているように思いました。この 仮説を立てて実験をする ところがキモじゃないかなと思いました。要求の答えは顧客に求めがちかと思います。でも、顧客だって本当に欲しいのかどうかはわからない。なので、エンジニアはもう1歩踏み込んで、顧客の価値観(優先順位)を把握して、その顧客の視点で見たときのシステムの機能や振る舞いを考え続けていく、というところかな、と。適当なこと言ってますが💦

もっと勉強したければ以下の本を読んでね、といことでした。ちなみに2,3番目の本はKindle Unlimitedで読めます(はてなPRO解約してUnlimitedに戻しましたので...読めます、しかもまた30日無料なんですって、不思議なシステムですがありがたいですね)。やはり1番目の本が一番詳しいようですが、あと、上記のACMのリンクにいくつか勉強資料のリンクがありました(ACM会員向けですが)。

ソフトウェア開発の現場から離れてしまったので最新技術についてはフォローできていませんが、やはり行き着くところは(もっとも根源的な問題であり課題は)人だなという感じがしています。受託はもちろん自社開発のソフトウェアでも、実際に何を実装すればよいのか(ソフトウェアの良さはどう測るのか?)は非常に難しいところだと思います。ソフトウェアがソフトウェアだけで存在しているわけではありませんし。そこで何をもって良いというかは答えはそう簡単には出せませんしね。これから巣立っている学生を見ながら、自分とは全く違う環境なんだろうけど、結局は同じような経験(開発手法、生産性、品質、社内政治、顧客、ビジネスモデル、経営、利益、育成、伝承、先端技術のフォローアップ)を積んでいくんだろうなぁと思っています。

さて、長くなってしまって、せっかく大学に着いたのに仕事できずにいます。。。何をやっているのか。

最後に、この講演者の著書にDIGITAL TRANSFORMATIONというタイトルの本がありまして、そういえばDXの原本って読んでないな。。。といまさら思いまして、昨日の帰りの電車でググって調べました。最初なかなか出てこなかったんですよ。。。しかたがなくPerplexityに聞きましたら以下の返答がありました。明快です。

Erik Stolterman, currently a professor at Indiana University, is believed to be the first person to propose the concept of Digital Transformation (DX). He defined digital transformation as "the changes that digital technology causes or influences in all aspects of human life" in a paper published in 2004

ちなみに、この文章のデータ元は以下のページのようです。たぶんですが。

www.aots.jp

で、たどっていくと以下の本の1つの章に書かれた論文?が元ネタのようでした。間違っていたらごめんなさい。

link.springer.com

で、今日の行きの電車で読んできました。たった6ページのシングルカラムの論文です。超要約すると以下なのかなと思います。これも間違っていたらごめんなさい。

我々、情報システムなしには生活はできませんよね〜。恩恵を少なからず受けているし、でも使う(使わされる)ことに抵抗を感じる人もいるよね〜(日本でいえばマイナンバー的な話か?)。情報システムの開発は既存のシステムの改善を目指して行われることが多いんだけど、それだと必ずしも我々にとって良い生活(good life)に結びつく結果が得られるかはわからないと思わない?で、提案として、美的経験(aesthentic experience)ってのを指標に加えてみたらいいんじゃね?とよい方向に向かうんじゃないかと我々は信じているわけよ(上記の講演者も使っていましたがbelieveって信念っぽくっていいですね)。我々はこれまで情報システムを使ってきた様々な経験を通してこの美的経験(aesthentic experience)を獲得してきたと思うわけ。具体的にこれをどう計測していけばよいかはこれからもっともっと研究していかなければならないと思うんだけど、少なくとも我々が我々の良い生活(good life)を送り続けていくためには、これからも生み続けられるであろう情報システムを作るときにそういう価値観を含めて開発していくべきなんじゃないかな、と思うわけです。

読後にかなり僕の頭の中で自分なりの考えと相まって変換されてしまったように思います。原文はね。。。読みにくいんです。少なくとも私にとっては。こういう文章って書けないなぁ。。。少なくとも論文という体をなす形で書くのは。何を言わんとしているのか、どこに問題があるのかがカッチリ把握できない。ぼやっとしている。。。僕の英語力のなさから来ているのだと思いますが。

読後に一番思ったのは、このたった6ページの文章を書籍の中から見つけてきて、それが今のIT関係者(Society5.0?)とかに影響を与えているのだとすると、それを見つけた人も凄いし、そこから話を膨らませたストーリーメイカー?の方も凄いというか天才的だなと思いました。

この本が発刊されたのは2004年です。もう20年も前の話なんです。。。ちょうど僕が前職を辞めて大学に来た頃です。20年前って。。。もう時代は全然違うわけですし。まさかその話がまだ続いているわけはないですよね。。。というかDXで仕事している人で原著読んだ人ってどれくらいいるんだろう?

ちなみに講演ではDigital TransformationはDTと呼ばれていましたね。DXは違うものなのかもしれません。不勉強ですいません。DXの本が確かUnlimitedにあったはずなので(これまで全然興味がわかなかった)ちょっと読んでみます。