memorandums

日々の生活で問題解決したこと、知ってよかったことなどを自分が思い出すために記録しています。

contextualize

本日16時(JST)が卒論締切でした。先週土曜日からつい先ほどまで駆け込み乗車のように論文チェックを求める学生のメールがひきりなしに飛んできました。細かいチェックには以下のようなものがありましたが、それ以前の問題を抱えるものが大多数でした。それ以前の問題とはcontextが全然意識されていないという問題でした。各自で何とか開発システムを完成しているものの、何のために研究してきたのかほとんど理解していないのです。

  • てにをは
  • 文体
  • 主部・述部の一致
  • 修飾詞の接近
  • 一文一義
  • トピックセンテンス


今年度の卒論を振り返り考えてみますと、卒論レベルの論文*1を書く上で一番大切なのはcontextだと思います。例えば、今年の卒論にコメント機能付きオンラインシラバスの開発があります。各シラバスにコメントがつけられるようになることで学生間、学生と先生間のコミュニケーションができるようになるというのが学生の最初の主張です。しかし、これではなぜコメント機能がないシラバスで不足するのか、コミュニケーションできることでどういう効果があるのかが明確ではありません。私は「コミュニケーション」という言葉には、以下のような具体的なニーズが隠されているのではないかと指導しました*2。要はシラバスを軸としてその授業に関する「生の声」を学生間、学生・教員間で情報共有したいというニーズです。

  • シラバスにはこれから学習することが記載されており、未学習の学生がシラバスを読んだだけでは受講すべきか判断しにくい。
  • 実際に受講した学生はどう感じたのか、受講するメリットがあるのか知りたい。
  • 学生の評価や生の声を知ることで授業を改善することも期待できる。

論文の話ではありませんが、MITのジョン前田教授の対談にcontextに関するコメントがありました。

今の時代はクリエーティブについて他者と話をして伝えなければならない。contextualize(与えられた条件を明確にし,脈絡化すること)すべきなのです。「こういう作品」だけで表現できない。作品を見せるだけでは伝わりません。

これはクリエーターの例ですが、作り上げた作品をどのように位置づけるかを伝えることも仕事の一つだと仰っています。卒論も同じで、作ればハイオシマイ!ではありません。その作品を作り上げるために考えてきたことを整理して自分の主張したいことに変換して文章にする必要があります。その文章の塊を適切な順番に並べて配置し、論理の道筋(背景→分析→課題→研究するポイントの絞り込み→提案手法の説明→実験;提案手法の有効性の検証→実験結果の考察→まとめ)をまとめながら研ぎ澄ます作業が必要になります。残念ながら、本学科には主張したいことからcontextを導くような訓練を行う科目がありません。強いていえば卒論がそれにあたります。多くの大学でも同じ状況かと思います。ただ、このままでは恐らく来年も同じような結果になるでしょう。何か良い指導方法がないか考え中です。テクニカルライティングがそれにあたるのかもしれませんが、回りくどい訓練をしなくても自分で論文を書き上げる経験を積んだ方が早いようにも思います。アルゴリズムを意識して自分でプログラムを組めるようになるのと同じように、自分の主張をブレークダウンして適切に配置して文章を組み立てるように指導するのは難しいですね。。。指導法は確立していないように思います。やはり習うより慣れろでしょうかね。。。

*1:論文に限らず自分の考えを相手に伝えるときには同じことが言えると思います

*2:もちろん以前から伝えているはずですが忘れてしまったようです